13-342「そして父になる」(日本)

それでも父さんだったんだよ 
 これまで順調に勝ち組人生を歩んできた大手建設会社のエリート社員、野々宮良多。妻みどりと6歳になる息子・慶多との3人で何不自由ない生活を送っていた。
 しかしこの頃、慶多の優しい性格に漠然とした違和感を覚え、不満を感じ始める。
 そんなある日、病院から連絡があり、その慶多が赤ん坊の時に取り違えられた他人の子だと告げられる。相手は群馬で小さな電器店を営む貧乏でがさつな夫婦、斎木雄大とゆかりの息子、琉晴。
 両夫婦は戸惑いつつも顔を合わせ、今後について話し合うことに。
 病院側の説明では、過去の取り違え事件では必ず血のつながりを優先していたという。みどりや斎木夫婦はためらいを見せるも、早ければ早いほうがいいという良多の意見により、両家族はお互いの息子を交換する方向で動き出すのだが。(「allcinema」より)


 是枝裕和監督の作品というと、これまで「空気人形」しか観たことがなく、「空気人形」自体は評価高かったが、是枝監督だからといって作品を観るということもなかった。

 本作は、カンヌ映画祭で大絶賛され、審査員賞を受賞し、スティーヴン・スピルバーグがリメイク権を取ったという話題の作品。

 日本で公開されても人気で、いまだに上映されている劇場があるほどであるが、それでも観るかどうか悩んでいたが、劇場が変わったときに、ちょうど時間が合ったので、鑑賞することに。

 6年間育ててきた息子が、病院からの報せにより取り違えられていたことが判明し、野々宮慶多の父親、良多と母親、みどりは愕然とする。
 そして、取り違えられたという相手夫婦、斎木雄大とゆかり、そしてその息子、琉晴に会う。

 そこから二組の夫婦の苦悩と葛藤が描かれ、更に二人の息子たちが立たされる辛い状況が描かれる。

 話としては非常に興味惹かれる内容であった。

 子供が取り違えられたという出来事によって陥った二組の夫婦の苦悩が描かれるが、そんな中、みどりと斎木夫婦は、6年間育てた息子を手放すことにためらいを見せるが、良多はどこか冷めた風に見える態度を取る。

 これまでエリート・コースとも言える道を歩き、仕事でも成功している良多は、この出来事についても、ある意味病院側が提示するマニュアルを踏襲しようと考えているように見える。

 発覚から、二組の夫婦は何度も交流するが、時折良多が見せる言動には、他人の苦しみを理解していないのではないかと思えるものもあり、好もしい人物には見えないところもある。

 しかし、良多自身も思い悩んでいる中で、父親とその後妻、取り違え事件の原因となった人物と家族らと話をしていくうちに、本当の家族、父親というものを理解し、心でも感じていく。

 取り違え事件も話の中心であるが、一人の男、父親の成長物語であることが判る。

 それにしても、こういう出来事で当事者夫婦は思い悩むのだが、もちろんアドバイスは欲しいとは思うのだが、実際慶多の祖父、祖母にあたる、良多の父親、みどりの母親もどこか他人事のように見えることしか言えないんだな。

 実際正解のない決断となるので、果たして良多たちがどのような決断を最後にするのか、非常に気になる話でもあった。

 良多の父親を演じていたのが、昨年亡くなった夏八木勲。
 本作が遺作になるのかな。

 作品としては、とても興味深く、面白いものであったと言えるだろうが、何とも正解が導き出せないストーリーで、最後に良多が父親として慶多に話しかけるシーンで気分が盛り上がっていくが、作品自体はもやもやした気持ちで終わるものだったな。

/5

監督:是枝裕和
出演:福山雅治、尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキー、二宮慶多、黄升炫、中村ゆり、高橋和也
    田中哲司、井浦新、風吹ジュン、國村隼、樹木希林、夏八木勲、吉田羊、ピエール瀧、小倉一郎
於:有楽町スバル座

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