160「休暇」(日本)

生を奪い、生を得る
 これまで独身のままだった中年の刑務官・平井は、子連れの未亡人・美香との結婚を決断する。しかし、連れ子である6歳の達哉との関係も打ち解けないまま挙式の日がやって来る。母の死の際、有給を使ってしまっている平井は新婚旅行へも出かけられそうになかった。
 そんな時、死刑囚・金田の刑の執行が2日後に決まる。死刑執行の際に〝支え役(死刑執行補佐)〟を務めた刑務官には1週間の特別休暇が与えられることを知った平井は、周囲の気遣いをよそに、自ら〝支え役〟に名乗りを挙げるのだった。

 前日鑑賞した「マンデラの名もなき看守」に続いて、刑務所の刑務官と囚人の話である。本作は日本の刑務所での話である。「マンデラ~」とは違い、囚人と刑務官の交流を描くような作品ではない。刑務官・平井のこれから生きていく上での重大な決意を表す作品であった。
 つい先日、「死に○」発言で大きく取り沙汰された、死刑執行。本作ではリアルなその風景も描かれており、実際その場に立ち会う刑務官たちの苦痛というものがひしひしと伝わるほどである。

 刑務官の平井はどことなく淡々と仕事をこなし、必要以上に物事に関わらないように生きているように見える。それはどことなく死刑囚・金田の雰囲気にも似ている感じがする。その平井が一大決心のように結婚することにする。しかも相手は子供もいる未亡人である。そしてその妻となる美香、その息子・達哉と打ち解けるために、休暇が必要と思った平井が金田の死刑執行に立ち会うことを決意する。
 新たな生を育むために、生を奪うことに関わるのである。

 ストーリーは平井、美香、達哉が休暇旅行に出かけているシーンと、二人の見合いから結婚、そして死刑執行までの日々を、時間軸を前後させて進めていっている。
 全体的に重々しい雰囲気でストーリーは進んでいき、刑務所でのシーンも、新人であろう大塚以外は淡々と仕事をこなしていくようである。
 まあ生と死を扱った題材であるだけに、面白いとも言えぬ作品ではある。しかも心情がわかりやすいシーンも少なく、平井も金田も表情が乏しく、そのわずかな表情の変化から現在の心情を読み取っていかなければならないのが、やや辛かったかな。
 全体的に少々やるせない感じがするが、ラストにこれから新たな人生を歩みだそうとする平井と家族のシーンで、何となくホッとすることができた気がする。

 刑務所でのシーンは、かなり現実に即したものを再現しているらしいのだが、一番驚いたのは、死刑執行に関しては、直前まで本人、家族にも知らせないということ。アメリカではよく執行何日か前に知らせ、最後の晩餐は好きなものを摂らせるというシーンを何度か観たが、日本では最後の晩餐も無いんだな。これが人生の最後というには、少々辛すぎる気もする。

/5
 
監督:門井肇
出演:小林薫、西島秀俊、大塚寧々、大杉漣、柏原収史、菅田俊、利重剛
    谷本一、宇都秀星、今宿麻美、滝沢涼子、榊英雄、りりぃ
於:有楽町スバル座
休暇 [DVD]
ポニーキャニオン
2009-05-20

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この記事へのコメント

2008年06月29日 22:35
こんにちは。
TB&コメントありがとうございました。
重苦しかったですねぇぇぇ。
音楽もないから、何か息苦しく感じるような雰囲気でもありました。
死刑執行、その日。
金田の動揺する様子がリアルで印象的でした。
西島秀俊が淡々と演技していたけど、そこだけ表情が強烈でした。
そこが一番印象に残っています。
2008年07月02日 00:25
となひょうさん、コメントありがとうございました。
そう言えば音楽もほとんどありませんでしたね。
朝の音楽だけというところは、囚人と同じ環境ですね。
それもまた観る側に重苦しい雰囲気を与えているのかもしれません。
無表情の金田のあの時の変化は印象的でした。

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