291「パンズ・ラビリンス」(スペイン・メキシコ)

あまりにも世界は残酷だから
 1944年内戦集結後のスペイン。父を亡くした少女オフェリアは身重の母親と共にゲリラが潜む山奥で暮らし始める。そこは母が再婚したフランス軍のビダル大尉の駐屯地だった。体調の思わしくない母親を労りながらも、冷酷な義父に馴染めないでいたオフェリア。
 そんな彼女の前に妖精が現れ、彼女を森の中の迷宮へと導く。そこでは守護神であるパンが、遥か昔に王国を出てしまった王女の帰還を待っていた。パンはオフェリアに王女として魔法の王国へと戻るための3つの試練を与えるのだった。

 空前のファンタジー・ブームと言われている現在、今もこれからも多くのファンタジーが公開され、公開される予定であるが、それらの中で異彩を放つのが本作かもしれない。

 恐怖政治が国を覆っていた暗黒の時代に、少女オフェリアは生まれるが、父は亡くなり、身重の母親と直面するのは目を覆いたくなるような現実ばかり。義父となったのが、レジスタンスを憎む恐ろしき大尉で、怪しきものは有無も言わさずに殺してしまうほど。恐怖の象徴たる大尉に対するレジスタンスたちの活動を描きながら、少女オフェリアが導かれる迷宮の世界が並行して描かれる。その世界は暗いトーンで描かれ、正にダーク・ファンタジーと呼ばれるものである。
 特にビダル大尉の取る行動は現実の凄惨さを表すものであり、迷宮の世界との対比が際立っていた。

 アカデミー賞で撮影賞、美術賞、メイクアップ賞を獲っただけあって、守護神パン、ナナフシの妖精、子供を食べるお化けペイルマン、マンドラゴラの根などの造型はなかなかだった。そしてこれらのものはファンタジーとして登場するには、どこかおどろおどろしい雰囲気も併せ持っている。

 果たしてレジスタンスたちはビダル大尉を倒すことができるのか? オフェリアは3つの試練を乗り越え、王女として迷宮に迎え入れられるのか? 最後はこの二つが集約され、この作品は終わる。まさかこんな終わりを迎えるとは思ってもいなかった。果たしてこれはハッピー・エンドなのか? 

 あまりにも残酷な現実と、美しき迷宮の世界。描かれるこの二つの世界は、どちらも興味深く、引き込まれる内容であった。オフェリアの迷宮世界だけでなく、レジスタンスの活動もよく描きこまれていたのではないだろうか。
 現実の終わりと夢の続き。終わりを迎えたとき、何と捉えればよいか難しくもあった。しかし、最後まで楽しめ、引き込まれた一作である。

/5
 
監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:セルジ・ロペス、マリエル・ベルドゥ、イバナ・バケロ、ダグ・ジョーンズ、アリアドナ・ヒル
    アレックス・アングロ、ロジャー・カサメジャー、フレデリコ・ルピ、マヌエル・ソロ
於:シネカノン有楽町1丁目
パンズ・ラビリンス オリジナル・サウンドトラック
ビクターエンタテインメント
2007-09-27
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この記事へのコメント

2007年11月24日 16:16
コメント有難うございました。

最近のお気楽ファンタジーとは違ってましたね、
こういうトーンの作品は大好きです、
CINECHANの○4つ評価も久しぶりに見た気がします
かなり楽しめたようでなによりです。
ところで○5つの作品て見た覚えがないですけど、
何か有るんでしょうか?聞いてみたいです。
2007年11月25日 10:32
こんにちは。
訪問ありがとうございました。
この作品は、ブロガーさん達の間でグーンと盛り上がっていた気がします。
それで、私はなんですけど。
これはハッピーエンドだと捉えておりますですよー
その辺も見る人によって解釈が異なる感じがして、また改めて見直したくなりました。1度の鑑賞で深く解釈している方もいらっしゃって、この作品の魅力も改めて実感した次第であります。
2007年11月25日 23:30
くまんちゅうさん、コメントありがとうございます。
私も結構こういうトーンの作品は好きですよ。
四つ星評価久しぶりでしたっけ? 結構付けている気もしますが。
ちなみに5つ星はこのブログでは「あるいは裏切りという名の犬」に付けてます。もう一つ言うと一つ星は過去には無いですねぇ。
2007年11月25日 23:36
となひょうさん、いらっしゃいませ。
この作品は人によって捉え方が違ってますねぇ。あのパンと迷宮が妄想なのか、現実なのかというところが結構焦点になるんじゃないでしょうか?
ただ、これはハッピー・エンドだと捉える人は多い感じがしました。
私は、逆にそう願いたい気がしますね。
これはもう一度観れば、また捉えどころもわかってくるかもしれませんね。

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