68「それでもボクはやってない」(日本)

一人の無辜も罰してはならない
 ある朝就職活動中の金子徹平は会社面接へ向かうために乗った満員電車で女子中学生に痴漢に間違われて現行犯逮捕されてしまう。
 警察の取調べで容疑を否認し、無実を主張するが、担当刑事に自白を迫られ、留置場に拘留されてしまう。さらに検察庁での取調べでも無実を主張する徹平はついに起訴されてしまう。刑事事件で起訴された場合、裁判での有罪確立は99.9%と言われる。
 焦燥感に駆られる徹平を弁護するのはベテラン弁護士・荒川と新人弁護士・須藤。そして徹平の母・豊子や友人・達雄たちも徹平の無罪を信じ、動き始める。
 そして徹平の裁判が始まった。

 鑑賞前までは、予告編の印象からコミカルな部分が多い作品なのかと思っていたが、実際はかなりシリアスな法廷作品である。ここまで裁判そのものに焦点を当てたストーリーもあまり見ないのではないだろうか。
 痴漢と間違われた男が逮捕されてから、取調べ、そして裁判で戦っていくという展開はリーガル・サスペンスに近いものがある緊迫感で惹き込まれる。そして無実を主張する徹平に対する警察、検察庁などのあからさまな対応などを見ていると、どんどん主人公に肩入れしていく。もちろん無実の主人公側、弁護側の視点のみの話だからそうなっても当然かもしれないが。

 ここのところ痴漢に限らず、冤罪の報道などをよく見聞きする。もちろんそこで言われるのは取調べをした警察の対応であるが、実際この作品を観ていると、日本の裁判の在り方というものも考えさせられる。
 
 「疑わしきは罰せず」という言葉を昔から聞くが、この作品では最初から「疑わしきは犯人」とされてしまっている。現実の裁判が必ずしもこうだとは言い切れないのかもしれないが、ちょっと疑わしいものである。

 最初から最後までストーリー展開、裁判の流れに惹き込まれ、改めて日本の裁判というものを考えさせてくれ、痴漢という犯罪、さらに冤罪の苦悩というものも見せてくれた作品。
 「正義は勝つ!」と必ずしも言えない内容ではあるが。

/5

監督:周防正行
出演:加瀬亮、瀬戸朝香、役所広司、山本耕史、もたいまさこ、田中哲司、光石研
    尾美としのり、小日向文世、高橋長英、大森南朋、竹中直人、本田博太朗、清水美砂
於:日比谷シャンテ・シネ

この記事へのコメント

2007年03月22日 20:50
こんにちわ。訪問ありがとうございました。そう言えば、まだ見ていなかったのですねぇ。
おおおおっ、ぴちょん君が4つ♪観に行って良かったでしょう?
この作品は、とにかくブラック・ユーモア?少々あり、シリアスだけど押しつけがましくないという印象を受けましたですよ。こういうエンタテインメントが見たかったという気がしました。
男性と女性とで、気になる部分が違ったりしそうですよね。派手さは無くても、見応え十分でしたね。
CINECHAN
2007年03月23日 00:58
隣の評論家さん、いらっしゃいませ。
確かに見応え充分の作品でした。
個人的にはもっと笑いがあるのか、と思ってましたが、ほとんどシリアスな作品でしたね。
本当は5点でも良かったかもしれないけど、どうにもこういう冤罪の話は報道で聞いても辛いもんで・・・
睦月
2007年04月02日 19:37
こんばんわ。TB&コメントありがとうございました。
「正義は勝つ」の公式が必ずしも成り立たないということが
日本の司法の世界で行われているというのがショックでしたね。

これだけ誠意をもって、真剣に受け手に投げかける映画を作った
周防監督は素晴らしいと思います!!

この作品を、女性からの目線で観ても不愉快に思わないように
作っているところもすごいと思いました。
CINECHAN
2007年04月03日 00:03
睦月さん、コメントありがとうございました。
アメリカでの法廷シーンでも、必ずしも「正義は勝つ」という感じではありませんが、本作はまたそれとは違った歪みですね。我が国の裁判だけに余計に衝撃かもしれません。
でも、映画としてはかなり引き込まれた、面白い作品でした。

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